ルバイヤート甲州

Nowhereman

2011年01月30日 11:51

 2004(平成16)年7月。
 生まれて初めて旅をした山梨県。
 この年の夏は、猛烈に暑く、比較的暑さに強い自分ではあったが、まるまる3日間炎天下の甲府、塩山、勝沼を独り歩き回るには、日頃鍛えていた「体力」あってからこそと実感させられたものだ。
 この旅で出会った多くの皆さん、そして感動的な経験が、自分と「北海道産ワイン」との出会いへと導いてくれた。

 実はその頃の自分は、「ワインと言えば赤ワイン」というくらい、赤ワインを専門的に飲んでいた。
 白ワインの美味しさや奥深さを知る段階ではなかったのだろう。
 何せ、勝沼ぶどう郷に点在するワイナリーを歩き回り、そのときに飲んだ数多くの白ワインとの出会いがなければ、きっと今でも白ワインについて学ぶこともなかっただろう。
 それくらい、今から約6年半前の山梨県への旅は、自分自身にとっては大きな「財産」となったのだった。

 感動したのは、「甲州(こうしゅう)種」というセパージュの存在。

 「ルバイヤート甲州シュール・リー 2009」。
 丸藤葡萄酒工業さん。
 Sur Lie。
 Surは、英語ではon,upon,above。この場合、適切な言葉として「・・・と同時に」か。
 Lieは、女性名詞であり、まさに「酒の滓」。「社会の屑」「最下層民」という字義もある。
 「酒の滓と同時に」という和訳であれば、「滓引きしない」というこの醸造法が理解できよう。
 「シュール・リー」と表示されているが、フランス語の発音では「シュル・リー」の方が近い。
 フランス・ロワール(Val de Loire)のミュスカデ(Muscadet)で使われる例が代表的。

 久し振りに飲んだ「ルバイヤート甲州」。
 冷やして抜栓した直後よりも、若干時間が経過した頃に、独特の穏やかな酸と重厚感が口の中全体に広がる。


 魚介類をたっぷり入れて煮込んだ「ブイヤベース」とともに、いただいた。

 自分自身にとっての「白ワイン」の原点。
 遠く勝沼の情景を、思い起こしつつ。

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